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副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

副作用モニター情報〈347〉 ワルファリンと経管栄養剤、抗菌剤との相互作用

 ワルファリン(以下WF)とビタミンKを含む経管栄養剤、WFと抗菌剤注射の併用で重篤な出血が発現した症例がありました。
 【症例1】脳梗塞後のリハビリ目的のため入院した患者 で、経管栄養剤の変更によって出血が生じた。入院前からWF6mg/日を服用中で、経管栄養剤としてラコール1200ml/日(ビタミンK1:750μg 含有)を投与されていた。入院2日後のINR(プロトロンビン時間国際標準比)は1.3。
13日目 INR1.8 胃ろうの不良肉芽から少量出血
18日目 経管栄養剤をラコールからファイブレインYH1200ml/day(ビタミンK:24μg含有)へ変更
39日目 胃ろう部不良肉芽から出血著明
45日目 INR6.6 WF4mg/日へ減量
49日目 INR5.3 WF2mg/日へ減量
53日目 嚥下食を開始。以降、経管栄養剤を漸減
59日目 INR1.8
79日目 経管栄養剤を終了。毎食を全粥ペースト食に
3カ月後 INR1.0

 ビタミンKを大量、持続的に摂取するとWFの効果が打ち消されてしまいます。この症例は、 含有量の多い経管栄養剤から含有量の少ない経管栄養剤に変更したとたん、INRが急激に上昇し出血を起こしました。WFを減量し、食事摂取へ完全に移行し たことで回復しました。日本人の成人のビタミンKの所要量は70μg/日程度であり、ファイブレインYHはかなり含有量が少なく、逆にラコールは10倍以 上も含有されています。

 【症例2】入院時WF2mg/日内服中。抗菌剤との併用で重篤な出血が生じた。
入院2~8日目 CEZ2g2回/日投与。
4~10日目 クラビット250mg2回/日投与。
8日目 INR 7.51。WFを中止。
17日目 WF1mg/日を再開。
22日目 INR 1.54。WF1.5mg/日に増量。
24~31日目 ゾシン4.5g2回/日投与。
32日目~34日目 CMZ1g2回/日に変更。
35日目 意識障害出現。INR 17.0 WFを中止、
 ケイツーN10mg投与。この間INR測定なし。
 消化管出血の疑いと貧血進行のため輸血施行。
37日目 INR 1.35

 抗菌剤によるWFの作用増強は、ビタミンK産生腸内細菌の抑制、肝臓での凝固因子の産生阻 害、腸管からのビタミンKの吸収阻害などの作用機序が考えられています。凝固能が適正にコントロールされていても、感染などで抗菌剤を併用する場合は、注 意が必要です。重篤化する前に対応できるよう頻回にINRを検査する、あらかじめWFを減量しておくなどの対策が必要です。

(民医連新聞 第1494号 2011年2月21日)

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