副作用モニター情報〈345〉 手足口病後のスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)と薬剤の関与
ウイルス性疾患に対する非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)の投与、および二次感染予防のための抗生物質投与の是非を、次の症例を通じて考えてみたいと思います。
【症例】30代男性。咽頭痛、手足の発疹、左頸部のしこりが出現。4日後にA皮膚科を受診、手足口病と診断されPL顆粒を処方された。その2日後にまた発疹が出現し、 B耳鼻科を受診、抗生物質セフジトレンピボキシル(CDTR-PI)錠とメチルプレドニゾロン錠を処方された。その日の午後に、今度はC病院を受診、ウイ ルス感染による発疹と診断され、d-クロルフェニラミン錠とロキソプロフェン錠(NSAID)の追加処方をうけて帰宅した。
翌日15時ごろから呼吸困難と発疹増悪にてC病院を受診、入院。CDTR-PI錠はこの日の朝までに3錠を服用していた。口腔粘膜浮腫、びらんによる痛 みがあり、眼球は充血。顔面と頭部以外の全身に強いかゆみを伴う発疹あり。CDTR-PI服用によるSJSと診断された。
SJSの発症機序は確定していませんが、ウイルス感染のほか、薬剤の投与、特に、NSAIDsや抗生物質、抗てんかん薬が原因として挙げられています。 手足口病は、主にコクサッキーウイルスA16型に感染して発症するウイルス性疾患です。当モニターでは以前、ピボキシル基を持つ抗生物質に皮膚障害を起こ す症例が目立つことを取り上げましたが、本症例もこれにあてはまります。また、ロキソプロフェンの関与も否定できません。
本症例は、SJSの原因とされる条件が3つ揃いました(ウイルス感染、NSAID、ピボキシル基を持つ抗生物質)。筆者は以前、18歳男性が手足口病で アスピリンとセフテラムピボキシル錠を服用し、SJSを発症したケースに遭遇しています。15歳以下では、ライ症候群の危険があるため感冒に対してアスピ リンなどNSAIDsは処方できませんし、インフルエンザに対してもジクロフェナクやメフェナム酸は原則禁忌です。ウイルス性疾患に抗生物質は不要です。
本症例を検討すると、手足口病にもNSAIDsを使うべきではないと考えられます。同様の症例が埋もれていないかも気がかりです。
(民医連新聞 第1492号 2011年1月24日)
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