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副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

副作用モニター情報〈270〉 TS-1(ティーエスワン)による重篤な副作用の回避について ~その1~

 2006年度、当モニターにティーエスワンによる副作用が13件寄せられ、うち血液障害が5件ありました。抗癌剤による血液障害は、早期に発見し、対応 できるかどうかで予後が大きく左右されます。今回は2回にわたり、抗癌剤による血液障害を重篤にしないための方策について考えます。

 [症例]80代女性、胃癌。他院にて、ティーエスワン80mg/日が開 始された。第2クール2週目に食欲低下を訴え、来院し入院となった。他に下腹部痛、頻尿の訴えもあり膀胱炎の疑いでオラセフを投与。その時点で白血球 4200/mm3、ヘモグロビン9.8mg/dl、血小板30,000/mm3であった。すぐに膀胱炎症状は消失したが、食欲不振は続いていた。
 入院5日目、白血球は800/mm3、ヘモグロビン7.3mg/dl、血小板は10,000/mm3、CRPは7.25に。骨髄抑制が疑われ、ティーエ スワン中止。濃厚血小板輸血とチエナム投与を開始した。翌日喀血し、止血剤を投与したが、入院7日目に白血球は600/mm3、ヘモグロビンは 6.8mg/dl、血小板は2000/mm3、CRPは11.92となり、入院11日目に永眠した。

*    *

 本症例では、高齢者へのティーエスワン投与の是非が問われます。また、適正使用基準値を下回っていたのに本剤を継続したこと、血液検査が適切な頻度で行われていなかったなど、いくつかの問題点があります。
 本剤を使用する際は、クールごとに適正使用基準に合致しているか必ず確認し、経過中に何らかの異常がみられた場合は、投与継続の可否を慎重に判断すること、好中球減少が疑われる場合には、頻回に検査を行い、続いて起こる重篤な副作用を早期に回避するための策を講じることが必要です。

(民医連新聞 第1406号 2007年6月18日)