副作用モニター情報〈338〉 市販薬ナイシトール85(=防風通聖散)による肝障害
【症例】60代女性。脂質異常症、骨粗鬆症で、ブラバスタチン、アクトネルを2年ほど処方され、サプリメント としてビタミンC、コラーゲンを7~8年服用している患者。市販薬のナイシトール85を3カ月ほど内服したところ、AST352、LDH340に上昇。薬 剤性肝障害が疑われ全薬剤中止となった。中止後、ASTは改善し、3カ月後にブラバスタチン、アクトネルを再開した。
ナイシトール85は、テレビのCMなどで腹部の皮下脂肪の燃焼・分解をうたい、売り上げを伸ばしています。その成分は医療用漢方薬の「防風通聖散」と同一で、1日量(12錠)と防風通聖散エキス顆粒2.5g(1包)がほぼ同量です。
防風通聖散には、黄芩(おうごん)のほか、甘草、大黄、麻黄などが配合され、これらの成分は注意が必要な生薬です。重大な副作用に肝機能障害・黄疸、間 質性肺炎があります。
全日本民医連の副作用モニターには、医療用「防風通聖散」を被疑薬とする報告が10件登録されており、そのうち肝障害・肝機能異常が5件と、半数を占めています。そのほか、下痢が3件、発疹と低カリウム血症が各1件でした。厚労省の重篤副作用疾患対応マニュアルには、漢方薬による薬剤性肝障害について 「一般に、発症までの期間は1カ月以内が44%、3カ月以上が29%と、やや長い症例がある。初発症状は、黄疸、全身倦怠感、腹部症状などであるが、アレルギー症状や白血球・好酸球の増多を伴う者は少ない」と記載されています。
「メタボブーム」の中で、関連する薬効をうたった薬剤の使用者数が、医療用・市販薬ともに増加しています。とくに、漢方製剤の市販薬は「第2類」に分類 され、登録販売者のいる店舗であればどこでも手に入るうえ、30種類を超える商品があります。中には、名称が「ナイシトール85」のように、「防風通聖 散」とすぐにわからないものもあります。
服用薬の確認をする際には、注意して聞き取ることが必要です。
(民医連新聞 第1483号 2010年9月6日)
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