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副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

副作用モニター情報〈337〉 マイスリー(R)(ゾルピデム=超短時間型睡眠剤)の一過性前向性健忘

 2009年度の全日本民医連副作用モニターで、ゾルピデム(商品名マイスリー)の副作用報告を抽出すると、一過性前向性健忘9件、せん妄1件、せん妄・興奮1件、興奮・幻覚1件、ふらつき1件、嘔吐・物が二重に見える各1件、頭痛1件、発疹1件でした。
 報告の中で特に多い前向性健忘とは、服用後ある一定期間または夜間に中途覚醒した時のことが思い出せない状態です。その発症年齢は、69歳以下が4人、 70代3人、80代2人で、投与量は5mgが1人、10mgが7人、15mgが1人でした。

【症例1】60代男性。不眠のためブロチゾラム0.25mgを服用していたが効果が弱くなったため、ゾルピデム10mgに変更。服用1時間後、入眠中に友人から電話があり会話をしたが、翌日その記憶がなかった。会話の内容に不自然な点はなかった。

【症例2】70代女性。認知症の既往なし。不眠のためゾルピデム10mgを開始した。夜中に裸で歩いていたのを夫が気づいたが、本人はまったく覚えていない。このようなことが2回ほどあった。

*   *

 ゾルピデムは2000年9月に日本でも承認された入眠剤で、ベンゾジアゼピン骨格を有さず、ベンゾジアゼピン受容体のうちω(オメガ)1受容体と親和性 が強いのが特徴です。ω1受容体が小脳、嗅球、淡蒼球、大脳皮質第4層などに多いのに対して、ω2受容体は筋緊張に関与する脊髄や記憶に関与する海馬に多 く存在するとされています。そのため、筋弛緩作用が弱いとされ、転倒リスクの高い高齢者にも使われるようになりました。
 また、作用発現までの時間が短く、作用の持続時間も短いため超短時間型睡眠剤に分類されています。一般に、作用発現が短い睡眠導入剤は、服用してから就 寝するまでに薬効が現れ「もうろう状態」になり、記憶があいまいになる恐れがあると考えられます。
 また、高齢者では最高血中濃度がばらつきますが、健康成人に比べ2.1倍と高くなり、血中半減期も1.8倍(4.6時間)で、決して「超短時間型」とは 言えません(医薬品インタビューフォームより)。高齢者ではもうろう状態がより持続する可能性があります。ゾルピデムの用量上限は10mgですが、高齢者 は半量に減量するのが望ましいと考えられます。

(民医連新聞 第1482号 2010年8月16日)

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