副作用モニター情報〈264〉 アロマターゼ阻害剤 (乳癌補助療法剤)による関節痛
アロマターゼ阻害剤には、第二世代ファドロゾール(アフェマ)、第三世代アナストロゾール(アリミデックス)、レトロゾール(フェマーラ)、エキセメス タン(アロマシン)があります。第三世代アロマターゼ阻害剤は、閉経後のホルモン受容体陽性乳癌患者の補助療法剤として、抗エストロゲン剤とならんで広く 使用されています。
最近、海外で本剤の関節痛などの副作用の発現率が20~30%あり、およそ5%が治療を中止し、発現リスクは年齢や種類・使用期間に無関係であり、過体重と、先行して抗エストロゲン剤を使用したかどうかに相関する傾向があるとの学会報告がありました。
民医連の副作用モニター報告では、2005年1月から2007年1月までの2年間で、アロマターゼ阻害剤については14件あり、うち関節痛の報告が、ア ロマシンで3件、アリミデックスで4件ありました。いずれもグレード1で、経過観察で投与を継続した1件をのぞいて投与中止しています。投与中止になった 6件のうち、抗エストロゲン剤からの変更症例が4件あり、発現期間は1週~2年とさまざまでした。6件すべて抗エストロゲン剤に変更となりました。
熊本大学の奥村氏らの報告に「25%の患者に関節可動時に円滑に運動ができないものや関節運動に痛みをともなう症状が認められた。発現時期の中央値は3 カ月であった。投与中止例は、はじめからアロマターゼ阻害剤を使用した群に比べ、抗エストロゲン剤からアロマターゼ阻害剤に変更した群に多い傾向があっ た。作用機序として低エストロゲン状態による軟骨代謝異常や軟骨滑液の粘性の変化が考えられる。症状が出現した後、原因は不明だが症状が改善する場合と悪化する例があり、症状出現後の6カ月間は症状の変化を注意深く観察し、抗エストロゲン剤の継続投与の可否を決めるほうがよい」との指摘があります。ほか、 日本大学の谷氏らによる、「アロマターゼ阻害剤によるリウマチ様関節症状」に関する119例のアンケート調査では、57%の患者にこわばり、43%に関節 痛が認められ、患者は自覚していても主治医に報告していない例が多いと報告しています。
閉経後乳癌のホルモン療法は、少なくとも5年間は継続する必要があります。本剤の関節症状は、添付文書などの「承認時では数%程度」との報告よりも実際 はかなり多いと予想されます。たとえ重篤ではなくとも、患者のQOLと服薬の意欲を低下させ、治療効果を妨げる要因になるので、本剤服用にあたっては関節 症状について十分に説明し、経過を観察する必要があります。
(民医連新聞 第1400号 2007年3月19日)
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