副作用モニター情報〈262〉 抗コリン吸入剤 スピリーバによる排尿困難
スピリーバ(チオトロピウム)は2004年12月に発売された新薬で、1日1回の吸入でよく、長時間型の抗コリン吸入剤としてCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の患者への使用が急速に広がっています。
このスピリーバによる排尿困難の副作用が2006年10月までに3例報告されました。年齢では、70代男性が2例、80代男性が1例です。
発現までの期間は、2週間、1カ月、4カ月半とまちまちです。80代の1例は、前立腺肥大の排尿困難症の治療中で添付文書上は禁忌でした。また70代の 1例は、当薬剤の中止だけでは改善せず、ハルーリン(前立腺肥大症の治療薬)を追加投与することで改善しました。
今回の副作用の発生は、いずれも高齢の男性でした。加齢による前立腺肥大の進行がベースにありました。またスピリーバは、長時間作用型の抗コリン剤であ り、加齢による腎機能の低下によって蓄積が起こったと考えられます。
高齢者や男性への使用は、風邪薬など、ほかの抗コリン作用を持つ薬剤との併用に注意が必要です。使用前・中は、外来などで問診や薬歴管理、ていねいな副作用チェックが必要です。
スピリーバは、その対象疾患から使用は数年以上、生涯にわたることも考えられます。しかし、海外での使用経験は4年、国内ではわずか2年です。日本での ブリッジングスタディも4週間だけで、長期使用に対しての安全性は引き続き検討段階と考えられます。
重篤な頻脈性の不整脈などの副作用も報告されており、抗コリン作用の機序による副作用を中心にこれからも注意深くモニタリングを必要とする薬剤です。
(民医連新聞 第1398号 2007年2月19日)
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