副作用モニター情報〈322〉 抗癌剤・ティーエスワン(TS-1)とワルファリンの相互作用に注意
ティーエスワン(以下、TS-1)など、フッ化ピリミジン系抗癌剤は、併用するとワルファリン(以下、WF)の作用を増強することが知られています。TS-1とWFの併用でINR値(プロトロンビン値国際標準比)が上昇した症例が報告されたので紹介します。
【症例】70 代男性。直腸癌のため転院してきた。手術の日程に合わせて、他院から継続されていたWF2.5mgを一時中止した。術後、同量のWFを再開した。そのとき のINR:2.4。1カ月後、術後補助療法のため、TS-1を開始。その3週間後、INR:6.4に上昇した。そこでWFを3日間中止して2mgで再開。 その1週間後INR:7.8。VK1注1A施行し、いったんINR:1.5に低下したが、その後WF1.5mgに減量したもののINR:4.6。TS-1 を患者の希望で中止したところ、WF1mgでINR値1前後に落ち着いた。
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当症例を報告した施設では16カ月間にTS-1が128例で使用されており、その中のWF併用の2例が、ともにINR高値となりVK1注を施行されてい ました。他施設でも、TS-1使用420例のうち併用11例全例でINRが上昇したとの文献報告があります。これらから、両剤の併用で高い頻度でINR上 昇が起きると推測されます。
TS-1の休薬期間中や終了後でも、WFの作用増強を示す傾向があります。また、VK1注によってINR値が速やかに回復しますが、VK1注の作用消失とともに(半減期約18時間)、再度INR値の上昇がみられるので留意しなければなりません。
両剤を併用した場合は、少なくとも2週間目にINR値を測定、その後も頻回に測定しWF量を調節することが必要です。両剤の処方医が異なる場合が多いので、他科の併用薬を確認のうえ処方し、併用期間中は連携して、WFの投与量調整を行う必要があります。
外来化学療法が増加する中で、重篤な副作用や相互作用を有する薬剤が外来で処方される機会が増えています。保険薬局では、異なる科の処方を総合的に監査し、安全性を確保することが強く求められます。
(民医連新聞 第1464号 2009年11月16日)
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