副作用モニター情報〈321〉 タケプロンOD錠(ランソプラゾール)による腸炎(下痢)
今回の副作用モニター報告で、プロトンポンプ阻害薬(PPI)のタケプロンOD錠による腸炎が報告されました。
【症例】80 代後半女性、逆流性食道炎。併用薬:アムロジピン、リーゼ、ブロプレス、バファリン、ポラキス、ブレシン(ジクロフェナクナトリウム)、ムコスタ、ベネッ ト。以前より便秘と下痢を繰り返していた。食道違和感があり、タケプロンOD錠30mg開始。1カ月半後も便秘と下痢を繰り返すため、コロネル、ビオフェ ルミン錠処方されたが、下痢が続くようになった。2カ月半後、1日に7~8回もトイレに行く状態のため、リン酸ジヒドロコデイン散3g(分3)を定期処方 に追加。それでも下痢が続くため、タケプロンOD錠の副作用を疑い中止。
3カ月後、大腸内視鏡検査と生検を行い、病理検査でコラーゲンバンドが確認されたため、タケプロンOD錠による薬剤性腸炎と診断した。3カ月半後、プレ ドニン錠15mg開始。タケプロンOD錠の代わりにオメプラール錠20mgを処方したが、服用2~3日で下痢が起きた。逆流症状(口の苦味、胸焼け)があ るためラデン錠150mg2錠(分2)へ変更。その後、下痢は改善し、プレドニン錠は漸減している。
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薬剤性腸炎の1つに「collagenous colitis(CC)」があります。慢性的な水様性下痢を主症状とし、内視鏡検査では肉眼的に大腸粘膜 の異常は見られないが、病理組織学的には大腸粘膜下に特徴的なコラーゲンバンドの肥厚を認めます。発症の原因は、いまだ解明されておらず不明です。しか し、薬剤の関与が報告されており、非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)、PPI、H2ブロッカー、カルバマゼピン、利尿剤などがあげられています。
下痢症状が続く患者がいた場合、薬剤性腸炎も疑ってみる必要があります。
ランソプラゾールによるCCは、薬剤開始1~2カ月後に発現すると言われています。病理学的に異常所見を認める大腸炎の報告があったため、2007年2月、タケプロンOD錠・タケプロンカプセルなどでは添付文書に追記されました。
(民医連新聞 第1463号 2009年11月2日)
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