副作用モニター情報〈256〉 パズフロキサシンの副作用情報
今回、2社から発売されているパシル注Rとパズクロス注Rにおいて、低血糖症状と白血球減少症、肝障害の副作用が報告されました。
〔症例1〕60代男性、縦隔膿瘍でチエナム注Rを投与していたが、高熱が続くためにパシル点滴静注液に変更した。500mgを1日2回投与開始した9日 目、白血球数(WBC)が1600まで低下し、血糖(BS)は35と低下した。この時点でパシルの副作用を疑い、投与を中止した。中止した3日後には、 WBCは6500、BSは219まで上昇した。他に原因と考えられる併用薬はなく、パシルによる可能性が高い。
〔症例2〕60代男性、肺炎でPIPC点滴治療を開始。培養の結果、クラブシェラ・ニューモニエ(+)にてセフメタゾールに変更。しかし、WBC、CRP 値に改善がみられず、パズクロス注へ切り替えた。投与7日目に食欲不振や吐き気、だるさを訴え、検査データから薬剤性肝障害と診断された。
薬剤中止後、絶食点滴利尿剤による治療で8日後に検査値は回復した。
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ニューキノロン剤ガチフロ錠Rで警告されたキノロン系抗菌剤の低血糖作用は、経口血糖降下剤のスルフォニル尿素剤と類似した機序で血糖が低下すると推測されています。高齢者や腎機能が低下した人は症状が出やすいので、減量するなどの対応が必要です。
肝機能障害については、発売1年後に重篤な副作用が追記され、使用上の注意が改訂されました。その根拠になった症例は、投与開始3日で重篤な肝機能障害が起き、薬剤を中止した3日後に死亡するというものでした。
投与後は、初期症状の観察や検査値のチェックを行い、副作用に注意しながら使用する必要があります。また先日、医療安全委員会から発信された安全情報(№23 06年7月15日)でも提起されているように、耐性菌を発現させないよう適切に使用すべきです。
(民医連新聞 第1391号 2006年11月6日)
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