副作用モニター情報〈315〉 パキシル錠(抗うつ剤SSRI)による抗利尿ホルモン不適合分泌症候群)
今回寄せられた報告の中から、パキシル錠を使用し、薬剤性SIADH(利尿ホルモン不適合分泌症候群)を起こした症例を紹介します。
【症例】80代女性。現病歴は高血圧症・糖尿病・胃癌。うつ状態に対し、パキシル5㎎(1日1 回)を開始。13日目に、意識ははっきりしているが少しぐったりし、血圧110/70、浮腫(-)、血清Na118mEq/リットル(正常 値:135~145mEq/リットル)へ低下。SSRIによるSIADHと診断しパキシルを中止。食事塩分を10gに増量した。尿中ナトリウム値 64mEq/リットル、尿浸透圧501Osm/リットル、ACTH4.7(正常値:7.2~63.3)、コルチゾール18.9(正常 値:4.5~21.1)。中止の翌日に血清Na122Eq/リットルへ上昇。中止5日目に血清値Na133Eq/リットルに軽快した。経過からみて胃癌と 副作用の因果関係はないと判断された。
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SIADHの診断は、1)低Na血症、2)尿浸透圧:
300mOsm/リットル以下、3)尿中Na濃度:20mEq/リットル以上、4)腎機能・副腎機能正常、5)血漿ADHが測定可能であることが主なポイントです。
パキシルの添付文書では、重大な副作用として、SIADHがおもに高齢者において現れることがあるとの記載があります。原因は不明とされています。初期 症状として、浮腫のない急な体重増加、全身倦怠感、頭痛、吐き気、眩暈、傾眠などがあげられていますが、多くの場合は自覚症状がなく、検査値の異常から発 見されます。発症しやすい時期は2日目~1カ月です。この症例は高齢であるため、少量から投与されていましたが、副作用が起きています。異常が生じた場合 には、血中Na値の検査が必要です。また、原因と考えられる薬剤を直ちに中止することも大切です。
(民医連新聞 第1457号 2009年8月3日)
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