副作用モニター情報〈282〉 アリセプトの精神症状と適正使用
アリセプトのもっとも多い副作用は、コリン作用による吐き気や腹痛などの消化器系症状です。しかしこの間、精神神経系の副作用が報告されていま す。2006年度から07年10月までに「幻覚」「興奮」「頭痛」「眠気」が各2件、ほか「めまい」「ふらつき」「不眠」「手のふるえ」「口唇のふるえ」 「元気がなくなる」があります。
〔症例1〕幻覚症状(グレード2)
アルツハイマー(AD)と診断され、アリセプト3mg開始(併用薬は抗うつ薬、ベンゾジアゼピン系薬、降圧薬など)。14日間服用し、5㎎に増量した3日後、幻覚が出現、服用中止になった。
〔症例2〕興奮(グレード1)
ADでアリセプト3mg開始。14日後に5㎎に増量。1カ月後「興奮あり」としてアリセプトの副作用を疑い中止。1週間で症状は消失。
〔症例3〕口唇のふるえ(グレード2)
糖尿病、パ-キンソン症候群、うつ病などを治療中の患者に、ADのためアリセプト3mg開始。5mgに増量した約3週間後に口唇のふるえが見られ、βブ ロッカー治療を試みるが効果なく、アリセプト中止。1カ月後に症状は消失した。
〔症例4〕手のふるえ(グレード1)
高血圧治療中で、ほかに精神症状に対し抗うつ薬、ベンゾジアゼピン系薬剤を使用中、ADの診断でアリセプトに切り替え、3㎎を開始する。投与2日目から、服用数時間後に手の震えが出現、夕方まで続いた。中止し、以前の治療に戻した。
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これらの症状は、原疾患が進行したための症状と区別し、見過ごさない注意が必要です。上記中3例が、3mgから5mgに増量した後に症状が出現していま す。アリセプトは「アルツハイマー型認知症の治療薬」として、メディアにも取り上げられ、患者家族が投与を熱望する場合も増えていますが、あくまでも症状の進行を抑制するだけで、認知症自体を治療する薬剤ではありません。正しい情報を伝え、適切な診断で投与し、使用中は副作用の発現に注意し、継続の必要性 を定期的に評価し、漫然と投与しないことです。
また、投与量が10mgまで可能になりましたが、用量増で副作用の危険性が増します。重症なほど高齢になるほど、有効性は乏しくなると言う専門医もいます。高齢者の医療費負担増が問題視される中、高価な薬であることも意識し、有効で安全な薬物治療を行うことが大切です。
(民医連新聞 第1421号 2008年2月4日)
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