副作用モニター情報〈240〉 インフルエンザワクチン接種後に発症した急性心筋炎
(症例)10代女性。A医でインフルエンザワクチンの2回目を接種(初回2週前)。その夜から発熱があり、翌日、A医を再度受診する。感冒との診断で点 滴を受け、薬剤を処方され服用する。次の日、解熱するも全身倦怠感が強く、腰背部痛あり、顔色不良となった。B病院を受診した時には全身状態不良、自立歩 行も困難で、顔面蒼白、血圧低下(60㎜Hg/S)を認め、ショック状態と診断。腹腔内出血による出血性ショックを疑い、輸液、血液検査、腹部CT検査を したが出血は認められず、BUN、CREが高値で、腎前性腎不全と判断。しかし、胸部レントゲン、心電図、心エコーで左室びまん性収縮不良が認められ、急 性心筋炎を疑ってC病院に救急搬送となる。同院でも循環動態の安定をはかるが、完全房室ブロックに続き心室頻拍が出現し、体外ペーシング、リドカインを施 行。人工心肺、大動脈内バルーンパンピングなどの導入を考えたが、心室細動が出現し、蘇生処置の効なく亡くなった。
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インフルエンザの流行期に、インフルエンザウイルス性の心筋炎が観察されることが報告されています。ウイルス性または特発性心筋炎のうちインフルエンザウ イルスによるものは10%以下です。比較的予後は良好ですが、いずれも感冒症状で始まり、感冒との鑑別がつきにくく、まれに劇症型となるケースがあり注意 が必要です。
本症例は、剖検をしていないため、インフルエンザウイルスによるものかどうかは判断できません。が、インフルエンザワクチンの2回目接種直後に、症状が急 激に起こっていることから、免疫学的機序も考えられます。心肺補助循環により救命し得たという症例もあり、対処としては、初期症状として感冒症状と胸痛、 腰背部痛、あるいは腹痛に注意し、心筋炎を少しでも疑った場合は、心電図、胸部レントゲン、心エコーを躊(ちゅう)躇(ちょ)なく行う必要があります。心筋炎が否定できない場合は、循環器科へのコンサルトや心肺補助循環設備を備えた施設に転送する必要があります。
(民医連新聞 第1374号 2006年2月20日)
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